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AIブームがスマートフォンとノートパソコンの価格を押し上げる

資金の流れはAIインフラへと集中し、スマートフォンから遠ざかっている。半導体メーカーはデータセンター向けの高帯域幅メモリーへ生産能力を再分配しているため、民生機器向けの部品が減少している。メーカーはAI用途専門のメモリー部品に注力しており、モバイル分野の供給全体が締め付けられている。

打撃を最初に受けるのは低価格帯の消費者。ローエンド端末は利益率が極めて低く、部品コスト増を社内で吸収することが不可能だ。プレミアムブランドは価格やプロモーションを調整できるが、エントリーモデルは余裕がない。

消費習慣も圧力を加える。ユーザーが高性能モデルへと流れ、低価格及び中価格帯の需要が減少しつつある。出荷台数が減り、入力コストが増加することで、最も柔軟性の低いセグメントが挟み撃ちされる。

■AIインフラ投資のゴールドラッシュ

これほどまでに需要が続く理由は何か?AIインフラの規模を見てみよう。アルファベット、アマゾン、メタ、マイクロソフト、CoreWeaveなどの大手企業は、今年だけで4000億ドル超をAIインフラ投資に充てる見込みであり、過去の技術投資を圧倒する。

集中した需要がボトルネックを生み出す。DRAMの在庫水準は2年前の30週超から8週未満に急減。業界分析によれば、AI関連のプロジェクトが世界のDRAM生産の最大40%を消費しているケースもある。

一方、スマートフォンメーカーも利益が見込める分野へシフト。市場調査によると、ユーザーが高メモリ構成、多カメラ搭載、AIエンジン内蔵機種など、価格が高い端末を選ぶことで、収益の成長が出荷台数を上回っている。利益が上位(800ドル以上)価格帯に集中し、グローバル出荷台数の中では少数だが、そのシェアは拡大中。最上位(800ドル以上)カテゴリは2024年に6.2%成長し、2030年までに最速で拡大する見通し。

【プロのコツ】もしスマートフォンの買い替えを検討している場合、特に低価格帯や中価格帯で早めに動くことで出費を抑えられるかもしれない。現在の価格環境は一時的ではなく構造的な変化であり、本格的な値下げは数年先まで見込めない。

簡単に言えば、複数の要因が重なっている。AIインフラ投資が未曾有のメモリー部品需要を生み出している。供給制約がピーク時の需要と重なっている。多くの消費者がAI機能搭載の高額端末へと移行中。最も重要なのは、供給能力の拡大に数年単位の期間が必要だという点だ。

低価格機種を愛用する消費者は、今後の買い替えサイクルを計画しよう。300ドル未満の市場では、価格上昇や選択肢減少が顕著になる可能性がある。部品コストがメーカーの許容範囲を超えて上昇すれば、その分価格転嫁が起こる。

一方、プレミアム志向の購入者は状況が異なる。高価格機種はもともと利益率が高く、この層の顧客は高度なAI機能を求めて支払いを惜しまない。機能が成熟するにつれて価値が強まり、メーカーはこの分野に一層注力していく。

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